2.4 生まれ変わったジャヤ 
「ドラカ郡のチャリコット
[i]で、マオイストが警察署を攻撃するという噂がありました。その村で私の両親は小さな食堂を経営していました。私たちは持ち家がなく、家を借りて生活していました。マオイストが攻撃してくることを知っていても、逃げられませんでした。他に行くところがなかったからです。私は朝と夜は母の仕事を手伝い、午後は学校に通いました。学校の名前はパシュパティ・カンヤ・マンディール学校です」

この文章は、ドラカのチランカ村出身のグルパ・ジャヤ・カドカが書きました。彼女の村へ行くには、チャリコットから丸一日歩かなければなりません。道が整備されていないのです。

2005年4月9日の夜、ジャヤの生活は大きく変わりました。彼女は4人の弟と母親と寝ていました。彼女の父親は竹を切りに出かけていました。真夜中に突然、ものすごい爆発によって起こされました。人々は叫び、あちこち走り回りました。すぐに、マオイストと治安部隊の戦いが始まったのだと分かりました。「私たちはその時、本当に怖かったです。それから弾丸が私のところに来て、足元で爆発しました。私は母に何か言ったように思いますが、すぐに気絶しました」と、ジャヤはその時の様子を語りました。

ジャヤの母、ドゥルガ・カドカもその夜のことを思い出して、話してくれました。「ジャヤは『お母さん!私の足が片方ない!』と叫びました。私は5人の子どもをベッドの下に押し込みました。それから、こんな危ないところにいられないと思い2人の息子を抱え、ジャヤに他の2人を連れてくるように言いましたが、彼女は意識がありませんでした。真っ暗でしたが、彼女の洋服が濡れているのは分かりました。私は、彼女が恐怖でお漏らしをしたのだと思いました。しかし、あとでまた彼女が『お母さん、本当に足がないの!』と言ったので、もう一度見てみると、彼女の洋服は血でびっしょりと濡れていたのです。私はひどく驚きました」

「私の心臓は、数秒間止まったと思います。その夜は、まるで一晩が百年だったかのようにとても長く感じました。私は朝になるのを待てず、子どもたちをつれて友人の家へ向かって歩きました。私はただ歩きました。戦闘の危険を意識していませんでした。子どもたちを抱え20分ほど歩き、友人の家へ着きました」

友人がジャヤの足を布で縛ってくれました。翌朝、ドゥルガはジャヤを軍の駐屯地へ連れて行き、助けを求めました。ジャヤは軍のヘリコプターでカトマンズへ連れて行かれました。チャウニ
[ii]の軍病院で彼女は適切な治療を受けることができました。

それから、ジャヤの新しい生活が始まりました。

事件の後、ジャヤの両親は村を離れることにしました。2006年6月5日にジャヤと家族はカトマンズに引越し部屋を借りました。

ジャヤの叔父の計らいで、彼女はシャンティ・セワ学校で学ぶ機会を得ました。彼女は授業料を払う必要はなく、昼食も出してもらえました。現在、彼女は6年生です。彼女の弟たちはカトマンズの別の学校に通っています。

はじめは、ジャヤの両親はバグマティ川で砂を取って売る仕事をしていましたが、それは季節労働だったので、ジャヤの母親は道ばたで小さな店を開きました。彼女の稼ぎで彼らの出費のすべてを賄わなければなりません。出費の中には家族7人が住む暗くて狭い部屋の家賃1,200ルピーも含まれています。彼女は日に100~150ルピー稼いでいますから、何とか足りています。

長女であるジャヤがしなくてはならない仕事も多いです。彼女は5時に起きて、学校へ行く前に前日使った食器を洗い、弟たちの朝食の準備をします。放課後は夕食を準備し、弟たちの宿題を手伝います。毎週木曜日は弟たちをお風呂に入れ、時間がある時には、彼女はパシュパティナート寺院を訪れます。

ジャヤは以前は医者になりたいと思っていましたが、彼女が怪我をして病院にいた時、それは簡単なことではないと思いました。今は、彼女の先生のサジャナのような良い先生になりたいと思っています。そして、教育を受けていないすべての子どもたちに教育の光を与えてあげたいそうです。

彼女が足を失った日が彼女の人生で最も忘れられない瞬間です。しかし、シャンティ・セワ学校で他の生徒の悲しい話を聞いた後、彼女は自分のけがについて気にしなくなりました。彼女はシャンティ・セワ学校で勉強できてとても幸せだそうです。村の学校よりも実践的な指導を受けることができ、とても明るい雰囲気だからです。

病院にいた時、ジャヤは人生はこの先真っ暗だと思っていましたが、シャンティ・セワ学校に入ってから彼女は幸せになりました。「私の新しい生活は、前の生活よりもずっと明るいです。そして私はひとりではありません。多くの子どもたちが紛争中の戦闘の犠牲者なのです」と、ジャヤは語ります。


[i] カトマンズより東方、チベットと国境を接する郡。チャリコットはその郡庁所在地。
[ii] カトマンズ市内北西部。