1-3. 生計、ごみ問題との関連
ストリート・チルドレンの中には、バスやテンプーなど公共の乗り物で車掌[i]として働いたり、食堂で皿洗いの仕事をする者もいますが、多くはごみとして捨てられる牛乳や油の入ったプラスチックの袋、割れたプラスチックのバケツ、ガラス瓶、その他さまざまな種類の銅、鉛、アルミニウムなど資源ごみを拾って生計を立てています。彼らは私たちの家のまわりや道端のごみの中からこれらのものを集め、資源回収業者に売るのです。この仕事をする子どもたちは、夜明け前に起きて資源ごみを探しに出かけます。午前中集めたものを売った後、午後は映画を観たり遊んで過ごします。再び夕方から夜中までごみを探して歩き、真夜中になって路上や回収業者の集積場、また施設などで眠ります。

実入りが良いときは、肉のカレーを食べたり、トランプや、映画、酒、また衣類やシンナーを買うのに稼ぎを使ってしまいます。ストリート・チルドレンは普通の貧しい家の子どもより、贅沢をしているように見えます。ネパール人のほとんどは祝祭日の時だけ肉を食べますが、彼らが普段から肉を食べていることを知って驚く人も少なくありません。お金が足りるなら、彼らは肉だけ食べてお腹いっぱいにしたいほどです。毎日映画を見たり娯楽にふけること、むしゃむしゃと何か食べ続けることが好きです。そうしないと気が晴れないのです。

ごみを探し歩く彼らですが、免疫力が強いのか、病気になる子どもは意外に少ないです。道端や私たちの家のまわりからストリート・チルドレンがごみを拾わなくなったら、私たちのまわりはどうなっていたでしょうか。コレラ菌など多くの病原菌が広がっていたかもしれません。ストリート・チルドレンが一般住民を健康被害から遠ざけ、自治体のごみ回収の一端を担っていると考えることはできないでしょうか。しかし、誰もストリート・チルドレンがごみ回収に貢献しているとは考えないのです。ストリート・チルドレンは「カテ」、時には泥棒とまで呼ばれ、見下されています。自治体が彼らのための活動をすることもありません。彼らの働きを評価し、ストリート・チルドレンの健康と安全に役立つような教育や技術訓練を自治体が行うことが必要です。彼らは目に見える働きをしているのですから、一般住民もストリート・チルドレンに対する偏見を捨てなければいけません。自治体のごみ回収が不十分な現状では、ストリート・チルドレンなしでごみの分別や資源ごみの回収はできません。彼らが売った資源ごみを売買することで多くの人が仕事を得ています。しかし、ストリート・チルドレンが大きな利益を得ることはありません。資源回収業者たちも、彼らに対して冷たいです。みな自分の利益だけを考えているのです。ストリート・チルドレンに対して、感謝の気持ちを持っていません。ストリート・チルドレンが資源ごみを回収しなかったら、自治体はごみの分別にどれだけお金をかけることになるでしょうか。これは真剣に考えなければならない問題です。彼らはごみの分別や環境にとって重要な貢献をしているのです。

年少の頃から、道端や住宅街で麻袋を担いでごみを集めていた子どもたちは、青年となった今、警笛を鳴らしながら住宅街でごみ回収をしています[ii]。仕事のやり方が少し違うだけですが、ストリート・チルドレンのほうは相変わらず見下されています。以前は、戸別回収サービスが少なかったため、路上にごみを捨てる人が多かった上、自治体の回収も遅れがちでした。ストリート・チルドレンがプラスチックや金属を集め、お金を稼ぐことはそれほど難しくありませんでした。最近はごみの路上投棄が禁止されており、自治体も早く回収するようになったので、彼らは仕事がしにくくなっています。この仕事で食べていけなくなると、ストリート・チルドレンは悪いことにも手を染めるようになります。盗み、強奪、売春などをしてしまう可能性があるのです。また、路上で物乞いをする子もいます。廃棄物処理の仕組みを改善するのと同時にストリート・チルドレンの生計のことを忘れてはいけません。彼らの仕事を奪ってしまうと、彼らが悪事を働いてしまい、国にとっても問題となるでしょう。こういう点も政府が対策を考えるべきです。

[i] テンプーはオート三輪車の総称。カトマンズとラリトプルで走行しているものはいずれも充電式電気自動車。車掌はネパール語で「カラシ」と呼ばれ、出発時に客を呼び込み、走行時に停車を知らせ、乗車料金の徴収も行う。
[ii] 行政によるゴミ回収システムが確立していないネパールでは、NGOや民間業者が各戸を訪問し、警笛で知らせながらゴミを回収している。